オペアンプ多段増幅型ヘッドホンアンプの組み上げ手順(改訂版) |
改訂した経緯 オペアンプ多段型のヘッドホンアンプについての記事はだいぶ前に執筆した物で、今思うと間違いは多いし改善点も山ほどあります。 このままでは、そのページを参考に組み上げる方がこれからも出てくるでしょうし、そのたびに質問されるのも面倒なので、思い切って 書き直すことにしました。 この先、ブレッドボードで組もうと考えていらっしゃる方はこちらの方を参考にしていただけると助かります。 |
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材料は上記になります。間違いないとは思いますが、足りないもの、個数の間違いなどありましたら、掲示板などで指摘していただけると たすかります。ご購入の際は、失敗や破損も考えて、少し多めに購入しましょう。初めての方は、まず、ももじさんの はんだ要らずのヘッドホンアンプ作製 を参考にするといいと思います。 まず回路図はこちら。(回路図を理解できなくても作製することは可能ですが、部品同士のつながりなどを確認する際に見てみてください。イメージがあるかないかで作製にかかる時間が大きく違います。 また、回路図が読めない方は絶対に回路中の定数を変えないでください。よろしくお願いします。) Fig.1 簡単に回路を説明しますと。。。 まず、電池を006Pの乾電池とすると電源電圧は9.6*2=19.2V。約20Vとして、LM6171の入力に流れ込む電流は20V/20k=1mA以下。LM6171の定格最大入力は±10mAなので、 恐らく電源投入時の過渡的な状況でもLM6171の破損はないと思われます。続いて、LM6171の最大出力電流は電源電圧が±15Vで100Ωの抵抗を駆動させると約100mA。回路中では出力抵抗が50Ω、 電源は±10Vなので大体の換算で100mA程度は取り出せるでしょう。ボルテージフォロアとしてLM6171を使っていますが、 50Ωの出力抵抗があるため発振が抑えられています。さらに、データシートを参考に0.01uFと2.2uFのコンデンサをパスコンとして配置。これでより発振しにくく、動作が安定することになります。 アンプ部の入力抵抗は一般的なオーディオ機器のラインアウトで、ある程度インピーダンスの低い(40Ω程度)ヘッドホン、イヤホンを駆動させる事を考え24kと10kに。アンプ部とグラウンドをつなぐ 抵抗は、ノイズを低減させるために最低でも4.7kΩとってあります。負帰還抵抗に並列につなぐ位相補間用のコンデンサは10pFに。これは若松でしか見つけられませんでしたが、積層セラミックに こだわらないのであれば、共立で普通のセラミックコンデンサを検索すると出てきます。 また、オーディオ用オペアンプのデータシートでよく見るパスコンの定数を参考に、電源部と同様、オペアンプの近くに0.1uFと4.7uFのコンデンサを配置しました。 使用するオペアンプはユニティゲインでニ回路のものになります。ユニティゲインということであれば、NJM4580、OPA2604(ニ回路)、OPA627、AD8610、AD843(一回路、変換基板が必要)などですね。 今回は、あまり音に癖がなく安いNE5532にしました。NE5532であってもかなり良くなってくれます。 電源の電流の振り分けは、NE5532の消費分で定格12mA、A級動作に流れる電流が9.6V、1.5kなので1つあたり約6mA。4つで26mA。LM6171の消費は2.5mA。 なので消費電流は合計約40mA。終段のNE5532が負荷(ほぼ短絡)を眼一杯駆動すれば±15Vで約76mA流れますが、 そんな状態にはなりえないので、LM6171で取り出せる電流(約100mA)以上にはならないでしょう。 消費が約40mAなので006P充電池で約5時間持ちますね。乾電池だとうまく使って10時間くらいかな。 A級動作用の抵抗の値を5k程度にすれば消費が約23mA程度になるので充電池でも8時間くらい持つでしょうか。 音と電池と相談して決めてみてください。 続いて配線図。配線図はこのようになります。 Fig.2 ブレッドボードはこちら。 Fig.3 ブレッドボードは、ソーダレスで回路の動作が確認できる便利なツールです。その仕組みは?といいますとFig.3に示したように、一番上部と一番下部は電源部をイメージしておりまして、 その部分は写真でいうと横のラインでつながっています(写真の青い線と赤い線)。真ん中のa〜j、1〜30の番号が振ってある領域は写真で言うと縦のラインでつながっています(写真の緑の線)。 今回使うブレッドボードはa〜eまでがひとつのラインでつながっていて、f〜jは又別にひとつのラインでつながっています。よってa-1に部品を刺しても、f-1〜j-1にはなんの関係もないということになります。 今回は、このブレッドボードの上部のマイナス(-)のラインと下部のプラスのライン(+)をグラウンド(GND)として使用します。 Fig.4 配線図を参考にジャンパーワイヤーを組み込んだ写真がFig.4になります。私は手元にジャンパワイヤーが山ほどあるのでなるべく短い物を使いましたが、写真のようにすべて短い物で組んだ場合は ジャンパが足りない可能性もあります。なので、材料のところにはジャンパワイヤーを2セット買うように書きました。もし、ニッパーなどをお持ちでしたら、ワイヤーを加工できますので 、その時は1セットで十分かと思います。写真には小さな保護ビニールが付いていないジャンパも使用しているので注意してください。(写真の中央やや下にひとつ。左やや上に二つ) Fig.5 続いて、抵抗を組み込んだ写真がFig.5です。抵抗は秋月のカーボン抵抗を使います。この抵抗は誤差が比較的大きいので、回路に組み込む際はテスターにて抵抗値を測定し、なるべく 値をあわせて使うようにしてください。金属被膜抵抗は誤差があまりありませんが、音が曇りがちなので、コストパフォーマンスからも秋月の抵抗をお勧めします。 またスペースの都合上、抵抗が一部立つことになります。抵抗の足を切るときはその辺も考えて切ってください。 酸化金属被膜抵抗(1W)の足は太いので、ブレッドボードに差し込む時は若干力が要ります。あと、LEDには極性があります。足の長い方をプラス側に接続します。配線図の方に極性が分かるよう(+)を書いてありますので参考にしてください。 もし、足を切ってしまって分からなくなった場合は、樹脂で埋め込まれている素子の大きさが小さいほうがプラスです。 Fig.6 Fig.6はタンタル電解コンデンサーの写真です。写真から分かるように足の長さが違います。もちろん長いほうがプラスです。 また、タンタル電解コンデンサはプラス側の本体に白い帯を入れることになっています。アルミ電解コンデンサーはマイナス側に帯が入るので 勘違いしやすいと思います。気をつけてください。 Fig.7 こちらがアルミ電解コンデンサ。もちろん足の長いほうがプラス。帯はマイナス側に入っています。 写真に写っているのは全然関係ないコンデンサですが、新品がなかったので仕方なく写しました。 足の長さが同じコンデンサは全て極性は関係ありません(セラミックコンデンサやフィルムコンデンサなど)。 これらは特に気にせずにブレッドボードに取り付けてください。 Fig.8 コンデンサを取り付けた後の写真がFig.8です。MUSE-KZのコンデンサも足が太いので、差し込むには力がいると思います。また、写真では一番大きい1000uFのコンデンサは付いておりません。 Fig.9 1000uFのコンデンサ、オペアンプを取り付けた写真がFig.9です。オペアンプには刺す方向があり、これを間違えるとオペアンプの破壊につながります。オペアンプの上部についている丸いくぼみ または、半円の凹みが左側を向くように差し込んでください。この状態で一番左下のピンがオペアンプの1番ピンとなります(覚えておくといいかと思います)。 ちなみにオペアンプをICソケットに乗せるとぐらつきなどもなくなり安心かと思います。 もしICソケットの裏側に高さを稼ぐための出っ張り?があるソケットの場合はニッパーなどで切り落とし、なるべく深くまで刺せるようにしてください。 Fig.10 次に、電池とブレッドボードをつなぐ部分を作ります。できればFig.10のように電池スナップとスイッチ、ブレッドボードに差し込む端子はハンダでつけたほうがより安全でしょう。 スイッチは電池からくる線を真ん中に。ブレッドボードに続く線を外側につなぎます。また、電池スナップを直列につないだ場所はテープなどで絶縁しておくとより安全です。接続に使う線材は LANケーブルがお勧めです。LANケーブルは高周波でも素直に通るように作られていますので、オーディオ帯域で悪さをすることははないと思いますし、伝達特性もいいと思います。 あえて欠点をいうのであれば、線が硬いことと、ハンダ付けなどで熱を加えると被覆材が溶けてくることでしょうか。。。 Fig.11 ブレッドボードに差し込む端子はFig.11のように、部品の足や錫めっきの銅線(単線)などを利用してハンダで接続すると安全です。圧着端子などでも可能ですが、その際は熱収縮チューブなどで絶縁してください。 線材(LANケーブル)の上にハンダをのせる場合は、簡単にのってくれないのでフラックスを使い予備ハンダをするか、線材と錫めっき銅線(部品の足)が同じ温度になるまで少し長くこてさきをあてるかしてください。 温度が適正であれば、ハンダは流れるように部品にのり、がっちり固定できます。 Fig.12 ボリューム(一軸二連の可変抵抗)の写真がFig.12です。配線図を見てもらうと分かるのですが結局L1L2、R1R2は同じ場所に刺すことになるので写真のように錫めっき銅線(部品の足)で端子間をハンダ付けしました。 これでボリュームから伸びる線が二本減りますね。また、回路図を見てもらうと分かるのですが、ボリュームの使い方が正しくありません。ですが安いボリュームに信号を通すと どうしても音が悪くなるのでこのような配線にしました。さらに、安いボリュームですので左右で音の大きさが違う現象(ギャングエラー)も起こります。お金があるのでしたら ボリュームを複数買って、抵抗値をテスターではかり、なるべくギャングエラーが出ないものを使ってください。ちなみに写真右側がL1,R1ですね。 Fig.13 Fig.13はステレオミニジャックの写真です。少々分かりにくいですが、ミニジャックには1、2と書かれてある端子と、何も書いていない端子があります。 この1と書いてある方がLで2がR、何も書いてない端子が グランド(GND)になります(このジャックの端子2には、金メッキがされていました)。 このジャックに線材(LANケーブル)をハンダでつけることになるのですが、これが一番難しいと思います。一般的にジャックは強度を必要とするため、銅や錫、鉛ではなく、鉄などの硬い物が使われます。 しかし、鉄とハンダの相性はあまり良くないためハンダ付けは難しい物ものとなります。 前にも書きましたが、ジャック側に予備ハンダをする、温度をあわせる、フラックスを使うなどの方法を駆使してハンダ付けしてください。 Fig.14 ボリューム、電池スナップとスイッチ、ステレオミニジャックが全て完成したら、それをブレッドボードに差し込むことになります。んで、差し込んだ写真がFig.14です。 それぞれの部品から伸びるラインは、干渉しないように、それぞれを編みこんでみました。接続先は配線図をよーく見て間違えないようにしてください。少し危険ではありますが、 この状態でも動作確認できますね。 動作確認ですが、まずスイッチを入れ、すぐに出力側のグラウンド(GND)と出力側のR、Lとの電位差を測定してください。例えばNE5532などではその電位差(オフセット)は 約50〜10mV。OPA627などであればは約0〜0.5mVの電位差が測定できると思います。このくらいであればオフセットは小さいので無事に動いている可能性が高いです。逆に出力とグラウンド の電位差が5〜9Vある場合は、配線の間違いが考えられます。さらにこの状態でヘッドホン、イヤホンを接続するとヘッドホン、イヤホンが壊れます。注意してください。 発振については、オシロスコープなどがないと分かりませんが、私が作製した物では、安定動作を確認しましたので(NJM5532DD)ざらついた音が出る場合は、接触不良かと思われます。 そのときは不安定な部分がないか接続を再確認してください。 Fig.15 最後に、ケースに組み込んだ写真がFig.15になります。ケースの加工ですが、ケースの加工はドリルとリーマーがあればよいかと思います。穴はハンドドリルなどを利用して 最初に2〜3mm程度の穴を開け、その後6mm程度の穴をあけるといいと思います。ボリューム、ジャックの径は約6mmなので6mmで穴を開けた後、リーマーなどで微調整してください。 スイッチは約4.5mmの穴をあければ通りますね。ケースですが、私はASVEL社のSTORE&WAREというシリーズのRO-10というケースを利用しました。これはホームセンターなどで見つけられると思います。 フードパックですね。もし同等品がないのであれば、適当なものを選んでください。なるべく箱はアクリルのような硬いもののほうがいいですね。 Fig.16 RH1と一緒に使用している写真がFig.16です。持ち運ぶにはちょっと大きいかもしれませんね。コンデンサを小さな物にすればもう少し持ち運びやすくなるでしょう。 どんな音が出るのか気になる方はぜひ組んでみてください。でも、ブレッドボード上では部品の足がだんだん酸化してきますし、 激しい振動が加われば部品が取れてくる可能性もあります。作製された方は、ぜひ、これをステップとしてユニバーサル基板でも組んでみてください。安心感が違いますので。 |